2011/11/09

2011年、火星往復の旅。

ロシアの火星探査機Phobos-Gruntと相乗り(便乗?)で中国の探査機Yinghuo-1(蛍火1号)がバイコヌール宇宙基地からZenit-2SBで打ち上げられた。
理学ミッションは火星の衛星フォボスのサンプルリターン。



まずLaunch Vehicle Zenit-2SB(ロケット)について。
もともとEnergiaのLiquid Rocket Booster(液体推進剤ブースター)として開発された一段目エンジンRD-170に二段目を追加して単体で飛行できるように仕立てたのがZenit-2ファミリー共通の背景。ケロシン(RP-1)+液体酸素のロケットエンジンRD-171は4つの燃焼室とノズルで1基のターボポンプを共有する。現役の液体推進剤ロケットエンジンとしては世界最大の推力を持つ。
RD-171は基本的にはRD-170と同じ構造で、ノズルのジンバルを1軸から2軸に発展させたもの。
Zenit-2をSeaLaunchが上段ステージ(三段目)を追加・発展させたZenit-3SLからさらにフィードバックして、より先進的な仕様に改修されたのがZenit-2M/2SB/2SBLということらしい。
一部のサイトではZenit-2FGと表記されているが詳細不明。

4つのノズルから吹き出す、少し外向きに角度がついた炎が印象的。
いまどき固体推進剤ブースターを持たないロケットは新鮮。現役では韓国の羅老(一段目はロシアのアンガラ)ぐらいしか思いつかない。



…画質と被写体のバランスがおかしい。

一段目はリフトオフ後約11分で正常に燃焼終了、分離したものの、二段目の点火が3時間近く(地球2周分の時間?)経っても確認できない状態が続いた。南米上空で点火するシーケンスだったが、ロシアの地上追跡局はヨーロッパとアジアしかカバーしていないため、一時はテレメトリ受信できずトラッキングも見失った。
ブラジルの展望台が光学捕捉、その後ESA(欧州宇宙機関)のESTRACKが探査機からのpingを受信。続いてDeep Space NetworkのGoldstone Radar Observatory(電波天文台)も探査機がセーフモードに入っているというpingを受信。
現在、上段ロケットモーターとペイロードの分離状態は不明ながら、近地点(perigee) 207km 遠地点(apogee) 247kmのパーキング軌道を周回していることを確認。

Saturday, November 12, 2011 at 02:17 追記:近地点(perigee) 207km 遠地点(apogee) 347kmの間違いでした。

予定通りに上段に点火しなかったのはおそらく飛行制御ソフトウェアに原因があると思われ、その改修で正常な運用に復旧できるか調査中。ただし目的地が火星なのでお互いの公転軌道の関係であまり時間がない。タイムリミットは3日以内。
探査機本体やロケットモーターのハードウェア障害である可能性は低いが、もしそうだとしたら"The mission is OVER"だろう、というのが現時点でのまとめ。

ソースは以下。ロシア語が読めないので英語のサイトのみ。。。

Russian Zenit-2 launches Fobos-Grunt – Battle on to save mission

Russian Mars mission halted by glitch in low Earth orbit

あきらめるな。まだ家を出て玄関先で靴ひもがほどけたようなもんだ。
…ところで蛍火どこいった?

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