2011/10/31

露仏同盟。

こんなの知らなかった。

ギアナから初のソユーズロケット打ち上げ

フランス領ギアナのESAギアナ宇宙センター、クールー射場からロシアのSoyuzロケットが打ち上げられた。ペイロードはEUの衛星測位システム"Galileo"(アメリカで言うところのGPS)コンステレーションの一部"In-Orbit Validation"実証衛星2機。正常に軌道に投入して飛行を完了した。



ローンチビークル(ロケット本体)だけ持ってって上げられるもんじゃないから、わざわざソユーズ用の射場を建てたんだね。カウントダウンはフランス語で、その近辺のシーケンスはアリアンと同じESA風?

ロシアの射場はバイコヌール宇宙基地が北緯45度、プレセツク宇宙基地に至っては北緯62度!建設中のボストチヌイ宇宙基地でも北緯42度。
旧ソ連時代に打ち上げていたのは、軍事偵察衛星や自然科学観測衛星など極軌道もしくはそれに近い、傾斜角が大きい軌道の衛星ばかりだったから、射場の緯度が高いことはさほど問題にならなかった。
近年、傾斜角が小さい対地同期(静止)軌道等に衛星を投入するには、地球の自転速度を利用できない、発射してから飛行中に進路変更するエネルギーが無駄になるなどの理由で、まったく向いてない。ロシアにとっても北緯5度(!)のギアナ宇宙センターは魅力なんだろね。

ギアナ宇宙センター(CSG = Centre Spatial Guyanais)でソユーズを打ち上げる射場ELS(Ensemble de Lancement Soyouz = Soyuz Launch Complex)はArianeを上げる射場から15kmも離れてるんだってさ。広いな。

奇しくもSoyuzは英語でunion...つまり同盟や連合といった意味合いである。

Soyuzはロケットの名前でもあり、ペイロードとなる有人宇宙往還機の名前でもある。つまりSoyuz+SoyuzのみならずSoyuz+Progress(無人補給機)という組み合わせも存在する。

2011/10/27

政治に翻弄される。

こんなの買ってみました。PayPalの即時決済で5,688円。

SPACE SHUTTLE BURAN HEAT SHIELD THERMAL BLACK TILE



Buran計画はソ連崩壊とともにうやむやに立ち消えとなった儚い有人往還機の夢。
せっかくだから出品者に「これ実際に飛んだやつから取ったの?」と聞いてみた。
いわく「計画自体が中止になっちゃったから作ってる途中の個体から取ったものだよ。実際に宇宙に行ってきたやつはカザフスタンのバイコヌール宇宙基地に保管されてたみたいだけど、数年前に格納庫ごと崩れて壊れちゃったから部品を取るのは難しそうだなぁ」だそうです。

Buran Orbiterは、まず実験用の実物大模型や試験機が計8機製造された。

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1号機:実物大試験機
各種部品や打ち上げるロケット"Energya"とのフィッティングや静的負荷試験に使用。しばらくバイコヌール宇宙基地の野外に放置されたのち、2007年から現在は同基地内の博物館に展示。

2号機:実物大空力実験機
実際に25人を乗せて大気中を試験飛行した。2000年のシドニーオリンピック期間中、会場に展示。その後2002年から2007年までバーレーンで保存され、現在はドイツのシュパイア技術博物館で常設展示されている。

3号機:実物大モックアップ
電気電子系試験用。モスクワ近くのコロリョフ設計局に保管されている。

4号機:実物大モックアップ
マニュアル作成と訓練用。ロケットとの接続試験も行なった。バイコヌール宇宙基地に保管。

5号機:試験機(機体構造の一部のみ?)
次世代機のための振動や耐熱試験を行なう予定だった。現在は消息不明。

6号機:ペイロード試験機
宇宙空間を模した"environmental chamber"(人工環境室)でペイロード(貨物)の各種実験を行なった。現在はモスクワ近くのНИИХИММАШ(発音不明)試験施設に保管されている。

7号機:実物大試験機
静的および動的飛行負荷試験、振動・耐熱試験
モスクワのゴーリキー公園に展示。耐熱タイル部分は木製のフェイクで覆っていたが、雨ざらしで傷んできたため剥がし取り、現在は金属の機体に直に黒ペンキで塗って遠目に見るとタイルが貼ってあるような外観になっている。

8号機:実験機(一部のみ?)
真空試験、耐熱試験等を行なったが、その後は不明。
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ここから先は実用機、またはその予定だった機体。

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1号機:ブラン、またはブラーン
生命維持装置等は搭載しないまま無人で試験飛行、約206分で軌道を2周して無事に戻ってきた。
この個体がバイコヌール宇宙基地"Site 112"ので保管中に暴風で格納庫(hanger housing)ごと崩壊。Orbiter損傷のみならず作業員8名も死亡の惨事。すくなくとも2008年前半の時点では依然として瓦礫の山に埋もれたまま。

The Buran Space Shuttle.

2号機:プチーチュカ(小鳥の意)
95%程度まで完成していたが、残りわずかな電子電気系の搭載を待たずして計画消滅。1991年に無人で初飛行、1993年には生命維持装置を搭載して有人飛行の予定だった。バイコヌール宇宙基地内のMIKビルに保管されている。プチーチュカはBuran Orbiterの一般名詞になるはずだった。

3号機:名称未定
計画変更後、1995年に初の有人飛行予定だったが4割程度しか完成していない。モスクワのTushino factoryで雨ざらしになっている。2004年ごろNPO Molniyaへの移送や前出のシュパイア技術博物館に売却される可能性が報じられたこともあるが、すくなくとも2009年までは当時の状態から変わっていない。

4号機:名称未定
有人飛行の2号機として運用される予定だった機体。計画が消滅した時点で2割ほど完成。これもモスクワのTushino factoryの野外で雨ざらし。取り外された耐熱タイルがネットオークションに出品されている。←こいつか!

5号機:名称未定
有人3号機として運用予定だったが未完成のまま分解されて現存しない。
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オマケ。窓んとこ。約30万円。

BURAN PORTHOLE very rar Space Shuttle Buran Baikal

2011/10/22

よってたかって4感動。

日本の宇宙開発史上初。ひとつのテーマで映画が4本ほぼ同時製作されるという異常事態。

おかえり、はやぶさ(松竹)

全天周映像 HAYABUSA BACK TO EARTH

はやぶさ 遥かなる帰還(東映)

はやぶさ/HAYABUSA(FOX)

こんなみんなしてよってたかって映画にしなくても。。。まあどれも見たら号泣してしまうに決まってるのでBlu-rayが出たら家で見よう。

2011/10/13

スペースもったいない精神。

一般的に、ロケットの一段目には構造がきわめて複雑で高価な液体推進剤エンジンが使われることが多い。ほとんどの場合は一回使ったら終わり、燃焼終了とともに切り離して安全な海上へ投棄(jettison)する。

SpaceX Working on Reusable Falcon 9 with Fly-back Boosters

はい、ここでMOTTAINAI精神を発揮しちゃいました。地球を一周して同じとこに戻ってきた一段目、二段目を射場の同じところに軟着陸させようという研究。
Space X本家サイトには動画(イメージCG)がございます。

SpaceX - National Press Club luncheon with Elon Musk

…なめてんのか?と思ったけどもさしあたって一段目に関してはあながち荒唐無稽とも言えないかも?まず地球を一周してくる間に推進剤はほとんど使い果たして軽くなってるだろうし、減速には逆噴射だけじゃなく空気抵抗も利用できる。
打ち上げたその射点にストンと立つかどうかは別として。。。
ただ、フツウのロケットの一段目はそもそもジンバル以外でマヌーバ的なことを行うことは想定してないはずだから、すくなくとも空中でひっくり返るために必要な構造強度を設計し直す必要はある。質量の増加を抑えつつ。

実現すればペイロード単位重量あたりのコストを100分の1にできる!と豪語してるみたい。いくらなんでも100分の1はないだろう。スペースシャトルだって行って戻ってきたらエンジン含めてほとんど全バラシ整備してたわけで、かえって高くつく可能性すらある。何かしら機械を分解清掃・整備してみたことがある男の子(漢の娘を含む)ならわかるよね?

※ただしスペースシャトルは液体水素+液体酸素、Space XのFalcon 9はケロシン+液体酸素

ちなみにSpace X社の創立者である現CEOはPayPalの前身を創立して財を成したIT長者の類いで、Space X以外にTesla MotorsのCEOでもあるのだよ。個人資産300億円ぐらい持ってるみたい。でもロケット飛ばすにゃ十分とは言えない額だなぁ。

IGS-5B on F20

JAXAの公式発表ないままにレンタカー以外すべて予約しちゃったが大丈夫か。

情報収集衛星:「レーダー3号機」12月に打ち上げ

H2Aロケット、12月に打ち上げ 情報収集衛星を搭載

情報収集衛星12月11日打ち上げへ(鹿児島県)

今度は長谷じゃないとこから見てみるよ。
前日に皆既月食も見られるかも?

2011/10/11

ソフトウェアアップデート失敗 -> セーフモード -> 再起動で復帰。

カナダの通信衛星Anik F2に障害発生、音声通話、データ通信、銀行ATM網、CATVおよび民間飛行機の管制に影響。

Satellite problems ground Nunavut flights

・ソフトウェアアップデートのコマンド送信
・日常的な姿勢/軌道修正(routine maneuver)失敗?
・通信が途絶える
・衛星側が自律的にセーフモードに入る(ソーラーパネルを太陽に向けて電力を確保した状態で待機)
・自動的に再起動、通信再開。ソフトウェアアップデートは先送りにして機能復旧

人工衛星のくせにパソコンみてえなやつだな!

Anik F2 Satellite Returns to Full Service

Anik F2はある程度汎用性のあるBoeing 702型。2004年7月にAriane 5ロケットで打ち上げられた。質量(打ち上げ時の推進剤を含む)は6tに迫る大型の衛星で、Ariane 5GのGTO(静止軌道)ペイロードの上限に近い。
ちなみにAnikとはエスキモー(イヌイット)の言葉で「弟」を意味するらしいぞ。

2011/10/03

命短し。

大部分の人工衛星は軌道制御(あるいは再加速)用スラスタの推進剤が尽きたら、他に機能的障害がなくても運用寿命を迎える。

前回までのあらすじ(うそ)
ロケットエンジンは基本的に自らの質量の一部(推進剤)を高速で投げ捨てる(噴射する)反作用によって推力を得る。
宇宙空間における加速(姿勢や軌道の変更など、等速直線運動以外すべて。ただし天体の重力を利用するスイングバイを除く)は投げ捨てる質量の大きさとその速度で決まることが19世紀にロシアの科学者コンスタンティン・ツィオルコフスキーによって証明されている。イオンスラスターは投げ捨てる質量そのものはきわめて小さいが速度が化学ロケットに比べて高い。一般的な化学ロケットが推進剤を酸化させたガスを噴出する速度は最大4,600m/s程度、これに比べてイオンエンジンは30,000m/s以上。近年、多くの人工衛星や探査機にはヒドラジン+酸化窒素の二液化学スラスターに代わって、より比推力の高い(≒燃費がよい)イオンスラスターが採用されている。

余談だがツィオルコフスキーが上記の公式を完成させたのは1897年、リリエンタール死去の翌年。ライト兄弟の初飛行よりも前なんだってさ。

衛星多数が宇宙ごみ化-NASA「UARS」落下、燃料補給で延命策も

速くて軽くて小さくて安い。ロケットガールじゃねえか!(公式サイトは終わってた)

作者自ら「荒唐無稽」と評したスキンタイトスーツとハイブリッドロケットは、作中に出てくるものとは異なるものの(とくに後者)、実際に研究が進んでるぞ。
原作とアニメの相違点「冥王星は惑星ではなくなっている」にも微笑。

これ見て宇宙開発および関係技術者に対する冒涜であるとか評論しちゃってるブログ見つけたけど何を期待してんだろう。JAXA(NASDA,ISAS)はともかく宇宙開発全般が「聖域」だった時代なんか人類史上一度たりともなかったのに。
人の安全を軽視するどころか人殺しの道具が不可欠でバンバン殺し合いしちゃうガンダムみたいの全部ダメじゃん。ブラックジャックもわりとカジュアルに命の値踏みするしさ。そういうもんだよ。アニメとかマンガとか。